集中治療室(Intensive care unit/ICU)に入室した患者さんやそのご家族さんに発症する身体面・精神面・認知面の機能障害をPost-intensive care syndrome (PICS)といい、近年の集中治療医学において、患者さんとご家族さんの長期予後の改善は重要な課題であるとされています。
Post-intensive care syndrome-family (PICS-F)とはPICSの中でも患者さんの家族に生じる精神障害を表す概念です。
2012年にCritical Care MedicineにPICS-Fのレビューが発表されました(Judy et al. Crit Care Med 2012 Vol. 40)。そこには「重症患者の家族に生じる精神障害」と定義されており、具体的な症状として「不安」「抑うつ」「PTSD」「複雑性悲嘆」が挙げられています。
家族にとって自分の身近な人がICUに入室し治療を受けることは,強いストレス反応を引き起こし,不安障害,抑うつ,PTSDを発症する可能性が高くなります。

しかし、近年では、家族に生じる精神障害だけでなく、身体的、社会的な問題をも含めた、より広い概念としてPICS-Fを捉える傾向にあります。具体的には、睡眠障害や疲労、失業や孤立などです。
PICS-Fは20〜40%の家族に発症すると言われていますが、症状がいつまで続くかなど、PICS-Fの全貌は明らかとなっていないのが現状です。
PICS-Fの発症機序などの病態生理に関してはまだ明らかとなっていませんが、我々は、家族の「レジリエンス」が発症に寄与しているのではないかと考えています。